香港城市大学(CityUHK)のギャラリー(The Indra and Harry Banga Gallery)が開設10周年を記念し、現在、ゲームの本質に迫り、社会的影響を探る展覧会「The Power of Play: History, Art, Technology and Impact of Games」を開いている。
企画は、同大クリエーティブ・メディア学部(SCM)学部長で、ゲーム研究と電子文学の分野を切り開いた世界的権威であり、ゲーム研究者として知られるエスぺン・オーセス(Espen J. Aarseth)教授が担当。会場は、同大内インドラ&ハリー・バンガ・ギャラリー(The Indra and Harry Banga Gallery, 18/F, Lau Ming Wai Academic Building, CityUHK)。展示は古代エジプトのセニトからeスポーツ、VR、インディーゲームまで、5000年にわたる「遊び」の歴史と文化的意義を見つめ、遊びとゲームの多様な姿を通じて「プレーとは何か」を問い直す。
同大は1984年に設立され、現在は約2万人の学生を擁する香港有数の総合大学。特にクリエーティブ・メディア学部(SCM)はアジアでも先駆的な存在として知られ、芸術・テクノロジー・学術研究を横断する教育を展開している。研究水準は国際的にも高く評価されており、ゲーム研究やメディア芸術分野では世界的な拠点の一つとされる。今回の展覧会も、同大が持つ学際的な強みを生かし、香港の文化産業に新たな視座を提供する試みとして企画した。
展示は6つの主要セクションで構成する。冒頭では約5000年前の古代エジプトのボードゲーム「セネト」を再構築し、現代的解釈を加えた作品群を紹介。ゲームが単なる遺物ではなく、文化的に生き続ける存在であることを示す。続く「Lost? In the Labyrinths」では、シャルトル大聖堂やロンドン郊外ハンプトン・コート宮殿などに着想を得た迷宮をVRで体験でき、人生の不確実性を象徴する構造を体感できるようにした。
「Good, Bad, or Innocent Fun?」では、中世の賭博への不安から現代の暴力的ゲーム論争まで、ゲームを巡る社会的偏見を検証する。「From Gaming to eSports」では、2000年代初頭、eスポーツ黎明(れいめい)期を象徴する代表的なFPS(ファーストパーソン・シューティング)ゲームであり、オンライン対戦文化を世界に広めた作品「Counter-Strike」や「Quake III Arena」を通じ、遊びが競技へと進化し、世界的なeスポーツ文化へ発展した過程を紹介する。
創造性に焦点を当てた「Minecraft」セクションでは、プレーヤーがブロックで香港の街並みを再現したり、ゲーム内で新たなゲームを構築したりする事例を展示。グローバルなコミュニティーが協働し、遊びが文化的創造へと広がる様子を示す。
目玉の一つ「Buckets of Fun」は、産業用ロボットを用いた協働型ゲーム。2チームがロボットアームを操作し、制限時間内にボールを得点バケツへ投入する。オーセス教授と梁博賢助教授が共同開発し、テクノロジーと遊びの融合を来館者が直接体験できる。
「What Is an Indie Game?」セクションでは、大手資本に依存せず個人や小規模チームが制作するインディーゲームを紹介。商業的制約から自由な創作が、ゲーム文化の新たな可能性を切り開いていることを示す。
オーセス教授は「競技から迷宮探検まで、ゲームは多様で尽きることのない現象」と語り、ゲーム研究の広がりを強調する。ギャラリー館長の葉教授も「遊びはみんなで何かを生み出す活動の一つであり、芸術と技術がどう結びつくかを理解する大切な視点を与えてくれる」と話す。
同ギャラリーは2016年の設立以来、レオナルド・ダ・ヴィンチ展や「Art Machines」など独自の企画を行い、分野を超えた交流を広げてきた。今回の展覧会も、文化産業としてのゲーム研究を香港社会に根付かせる試みとなる。
開館時間11時~19時。月曜休館。入館無料(事前オンライン登録制)。10月25日まで。