香港政府は大嶼山（Lantau Island）南東部に建設予定の人口島についての資料を立法会に提出した。12月29日から議論に入る。それによると、3 つで構成される総面積1000ヘクタールの人工島を造成するほか、香港島西部から大嶼山を結ぶ道路及び香港島西部から新界（New Territories）の洪水橋駅（Hung Shui Kiu Station）までの全長30キロの鉄道を建設することなどが盛り込まれている。

香港島と人工島、ランタオ島から新界までが鉄道や道路でつながる

　香港政府は「香港2030＋（Hong Kong 2030+）」という長期ビジョンを策定しているほか、「明日大嶼願景（Lantau Tomorrow Vision）」と呼ぶランタオ島の開発計画も準備している。人工島は、大嶼山南東部にある交椅洲（Kau Yi Chau）という小島を中心に1000ヘクタールの人工島（Kau Yi Chau Artificial Islands／KYCAI）を造る計画だという。これは増加することが予想されている人口に対応しつつ、住宅供給不足を解消し、かつ住宅価格の高騰を抑えようとするのが主な目的。

　立法会に提出された資料によると、KYCAIの総建設費は約5,800億香港ドルで、交椅洲を取り囲む形で東側にあるA島（380ヘクタール）、西側のB島（380ヘクタール）、北側のC島（240ヘクタール）の3つの島を埋め立てる形で人工島を造る。人口は55万人を想定し、住宅は21万戸を供給予定。テーマが定めた7つのエリアを作り、それぞれが15分以内でつながる生活圏を形成する。快適な住環境にするため、娯楽施設、運動施設、緑にあふれた空間、親水公園、全長20キロのプロムナード、ヨット用の停泊施設などを建設する。特にA島は400万平方メートル分の商業用施設を確保するとしており、大型のショッピングモールが建設される公算が高い。2025年に埋め立てを始め、早ければ2033年から入居を始めたい考え。

　土地の用途の詳細は、住宅用が250ヘクタール（25％）、経済活動向けが100ヘクタール（10％）、公園用が200ヘクタール（20％）、政府系機関用などが200ヘクタール（20％）、道路・鉄道用が250ヘクタール（25％）いう割合を予定する。

　香港政府は、27万人分の雇用を生むほか、人工島の全ての開発が終了した後の経済活動は毎年2,000億香港ドル分の付加価値がもたらされ、域内総生産（GDP）の7％を占めるとする。

　人工島までのアクセスとして、フェリーのほか道路と鉄道の2種類を作る。道路は香港島西部から大嶼山北東部を繋ぐ全長13キロの「港島西至大嶼山東北連接路（Hong Kong Island West ? Northeast Lantau Link）」。同路線は南セクションと北セクションに分かれるが、南セクションは香港島北部を横断する4号幹線（Route 4）のうち堅尼地城（Kennedy Town）・石塘咀（Shek Tong Tsui）周辺からA島まで海底トンネルを造る。北セクションは、A島からは大嶼山北東部にある8号幹線（Route 8）までを海上橋または海底トンネルを作る形で接続するもの。住民の入居開始に合わせ2033年には開通させる計画。将来的には、新界西部に建設予定の11号幹線（Route 11）にまで延伸させたいが、インターチェンジなどが必要となる。ただし、周辺は旅客機の飛行ルートにもなっており、高さ制限などがあることから、さらに研究を重ねるという。

　鉄道は「港島西至洪水橋鐵路（Hong Kong Island WestーHung Shui Kiu Rail Link）」と呼ばれ、MTRの香港大学駅（HKU Station）を起点・終点として人工島を経由し欣澳駅（Sunny Bay Station）に接続。さらにそこから屯田東駅（Tuen Mun Station）を新設して、さらに西鉄線（West Rail）で2030年に完成予定の洪水橋駅（Hung Shui Kiu Station）までを繋ぐ全長30キロの路線を造成する。加えて3つの人工島を巡る専用の鉄道も敷設する予定だ。

　この道路と鉄道が完成すると、これまで香港島から新界西部に向かうには、九龍（Kowloon）を通る必要がなくなる。香港島から香港国際空港（HKIA）に向かう際も大幅な時間短縮が見込まれる。