ネット配車サービス「Uber 香港」は8月10日、新しいハイヤー配車サービス「Uber Elite(ウーバー・エリート)」を開始した。アジア太平洋地域では初の導入となり、ビジネス客や観光客など向けに、より快適な配車サービスを提供する。同サービスは香港大手の貸し切りバス会社「冠忠巴士(Kwoon Chung Bus)」と提携し、上級の陸上輸送を追求した送迎サービスとして展開する。
空港到着ロビーでの出迎えサービスやリムジン専用乗降場への案内
Uberは、2010年にアメリカで創業されたネット配車サービス。アプリを活用した独自のライドシェア市場を開拓し、短期間で世界中の主要都市へ進出した。2019年にはニューヨーク証券取引所へ上場し、現在は70カ国以上、約1万都市でライドシェア、相乗り、出前配達などのサービスを提供している。
香港では2014年にサービスを開始。コロナ禍で需要が急増し、現在もライドシェア市場をリードしている。ライドシェア、タクシー配車、ペット同乗、サポート送迎などを展開しているが、一般自家用車を使った配車は「白牌車(白タク)」と見なされ、長年グレーゾーンまたは違法とされてきた。タクシー業界からは収入減少への懸念から激しい抗議も起きている。
香港のタクシーは個人所有のほか、車両をオーナーから借り受けて営業する形態が多い。シフト制や日単位でレンタルし、売り上げから燃料費やレンタル料を差し引いた残りが収入となる。日本の基本給+歩合制とは異なり、香港のドライバー収入は歩合制に近い。さらに政府は1998年以降、新規タクシーライセンスの発行を停止しており、既存の約1万8000枚のライセンスは期限なしで転売・賃貸され続けている。このためレンタル負担が大きく、ネット配車サービスの拡大は経営難を一層深刻化させている。
警察による潜入捜査や摘発も続いており、香港終審法院(最高裁)は2020年9月、「白ナンバー車による有償旅客運送」を道路交通条例違反と認定し、Uberドライバー24人の敗訴を確定した。翌2021年8月にはUberが香港発のタクシー配車プラットフォーム「HKTaxi」を買収し、タクシードライバーへのサービス提供を拡大した。
配車サービス需要の高まりに応じて、政府は2025年10月に「2025年道路交通(修訂)(網約車服務)條例草案」を可決し、条件を満たした配車プラットフォームは8月、ドライバーや車両は年内にも申請を受け入れる予定。来年の8月22日から全面実施する予定だ。
今回の「Uber Elite」は、企業経営層や海外出張者、富裕層、観光客、法人客をターゲットにしたVIP対応のハイヤー配車サービス。シャトルバスや越境バス、バリアフリーバスを運営する冠忠巴士と提携し、正規ライセンスを持つ同社の車両を使用。「陸上のファーストクラス」と位置づける。
車両は最大6人乗りのラグジュアリーMPV(ミニバン)などを使用し、6時間の研修と審査を修了した制服着用のプロドライバーが対応。車内には無料Wi-Fi、ミネラルウオーター、スナック、充電設備、おしぼりを完備。空港到着ロビーでの出迎えサービスやリムジン専用乗降場への案内など、ポイント・トゥ・ポイント(point-to-point)サービスを提供する。
完全事前予約制で、乗車の2時間前から最大90日前まで予約可能。フライト遅延やスケジュール変更にも対応し、通常乗車で30分、空港ピックアップでは60分の無料待機時間を設けた。24時間年中無休のカスタマーサポートが乗車前から降車後までサポートする。
「Uber 香港」のエスティン・チャン(Estyn Chung)統括部長は「国際的ハブとして、香港にレベルの高い移動サービスを必要としている」と述べ、「冠忠巴士」取締役のティモシー・ウォン(Timothy Wong)さんも「厳しい基準と技術力を持つチームにより、居住者や訪問者にも安心でレベルの高いおもてなしを提供する」と話す。