アメリカの経済誌「フォーブス」が2月22日、2023年の香港のトップ50人の長者番付を発表した。香港でトップに立ったのは長江和記実業（CK Hutchison Holdings）を創業した李嘉誠さんの390億米ドル（約5兆3,000億円）だった。

　李さんは2019年まで香港の長者番付で21年間、1位だったが、2020年に恒基兆業地産（Henderson Land Development）の創業者である李兆基さんに、その座を奪われた。しかし、2021年に1位を奪還した後、2022年、2023年も定位置を死守。株式を保有しているエナジードリンク「CELSIUS」に米ペプシコが5億5,000万米ドル（約747億円）を投資するとアナウンスし株価が上昇したことが要因だ。

　2位は前述のヘンダーソンランドの李兆基さんの30億3,000万米ドル（約4兆1,700億円）だったが前年より11％資産を減らした。ただし、ヘンダーソンランドは中環（Central）にある観覧車「香港摩天輪（Hong Kong Observation Wheel）」周辺の再開発を508億香港ドル（約8,800億円）で受注している。

　3位になったのがデベロッパー最大手の新世界発展（New World Development）のトップである鄭家純（Henry Cheng）さんとその家族で、289億米ドル（約3兆9,200億円）だった。新世界は、傘下企業で貴金属を扱う周大福は金の需要増加により同社株が2割上昇したことが大きい。

　4位はオイスターソースで有名な食品会社、李錦記集団（LKK Group）を経営する李兄弟が193億米ドル（約2兆6,200億円）だった。新型コロナウイルスによる在宅時間が増えたことに自宅で料理する機会が増えたことにより売り上げが伸びた。李一家は、現在の4代目に当たる5人の兄弟が経営しているが、1代目と2代目は経営を巡り訴訟沙汰などの内紛が起こった歴史がある。そうした背景から2002年に会社のガバナンスを効かせ、もめ事が起きないようにカウンシルを設立し、直径家族のみ株式を保有できるなど細かいルールを決めている。　

　5位は、デベロッパーの会徳豊（Wheelock）と、その傘下の九龍倉集団（The Wharf （Holdings））の元会長を務めた呉光正（Peter Woo）さんの169億米ドル（2兆2,300億円）。銅鑼湾（Causeway Bay）の時代広場（Times Square）、尖沙咀（Tsim Sha Tsui）の海港城（Harbour City）は、この企業が運営している。

　女性でトップに立ったのは6位にランクインした●肖卿さんの152億米ドル（約2兆600億円）。彼女は香港最大手デベロッパーの一つ、新鴻基地産（Sun Hung Kai Properties）の共同創業者である郭得勝の妻に当たる。3人の息子が新鴻基地産を継いだものの、さまざまな問題が起きたため、今でも筆頭株主とて経営を見守っている。

　ほかにランクインした人たちを見ると、7位にはマカオでカジノを経営する銀河娯楽集団（Galaxy Entertainment Group）やデベロッパーの嘉華集団（K. Wah Group）を経営する呂志和さんが149億米ドル（約2兆200円）で入った。初代行政長官である董建華（C.H.トン）と弟の董建成兄弟とその家族が65億米ドル（約8,800億円）で12位にランクインしている。この2人は東方海外（國際）（Orient Overseas （International＝OOIL））という、世界有数の海上物流企業である。

　ペニンシュラを運営する香港上海大酒店（The Hongkong & Shanghai Hotels）や中華電力（CLP Holdings）、ピークトラムなどを経営するMichael Kadoorieさんが63億米ドル（約8,600億円）で13位、インド出身で1970年代に香港に居を構えたHarindarpal Bangaさんは28億米ドル（約3,800億円）で31位だった。Bangaさんは砂糖、コーヒー、石油、肥料など農産物と天然資源を扱う商社、Noble Groupのトップを務めている。

　これら香港トップ50の資産額は、新型コロナウイルスの影響で3,280億米ドル（約44兆5,600億円）から32,40億米ドル（約44兆100億円）と、わずかに減った。

　●＝廣へんにおおざと。