香港の街を彩ってきた霓虹(ネオン)文化を記録し、未来へと継承する写真展「City of Lights」が現在、上環のBlue Lotus Gallery(28 Pound Lane, Sheung Wan, Hong Kong TEL 5590 3229)で開催されている。英国出身の写真家キース・マクレガー(Keith Macgregor)さんが1990年代から2000年代にかけて撮影した香港の夜景を集大成した新刊写真集の出版に合わせて開くもの。
霓虹文化とは、香港の街を象徴してきた「ネオン看板」を中心とする視覚的・都市的文化で、単なる広告ではなく都市のアイデンティティーや生活様式を映し出す。特に1970~80年代に全盛期を迎え、香港の夜景を世界的に有名にした要素でもある。
キース・マクレガーさんは1946年英国生まれ。幼少期からアジアで過ごし、後に香港に定住した。家具ビジネスを営む傍ら、写真活動を続け、香港の街並みやビクトリア・ハーバーの景観を長年にわたり撮影してきた。特にネオン輝く夜景に魅了され、1980年代にはマクレガーさんが撮影したポストカードが数百万枚、販売された。香港のイメージを世界に広めた立役者の一人でもある。
2002年には代表作「Neon City: Hong Kong at Night」を出版し、ネオンサイン文化の記録者として国際的に知られる存在となった。一部作品は「Neon Collage」として複数の写真を組み合わせ、ネオンの重なりや幻想的な効果を強調。都市の光を芸術的に再構成する試みで、単なる風景写真ではなく、都市の変遷と文化の記憶を刻む歴史的資料として高く評価されている。
大判プリントや写真集を並べるだけでなく、撮影当時のネガを拡大鏡でのぞける展示も用意した。これにより写真家の視点や撮影の細部をよりリアルに感じ取ることができるなどの工夫も凝らす。
同展は、Blue Lotus Galleryが企画し、同ギャラリーの出版部門「Blue Lotus Editions」から刊行された新刊「City of Lights」と連動する。香港の街を象徴してきた霓虹看板の輝きを、数百点に及ぶ未公開写真と共に紹介する。展示では書籍収録作品のオリジナルプリントも公開し、来場者は香港の街角に息づいていた光の記憶を追体験できるようにした。
香港のネオン看板は1980年代に全盛期を迎え、当時は10万枚以上が街を覆っていたという。しかし規制強化やLED化の波により、現在はわずか400枚程度しか残っていない。マクレガーさんは「ネオン看板は都市の舞台装置のような存在だった」と振り返り、失われつつある街の光景を記録するため、1998年から大規模な撮影を再開した。香港島から九龍、新界まで歩き回り、街の変貌を丹念に記録してきた。
今回の写真集と展覧会は、膨大なアーカイブからセレクトされた作品群で構成する。夜空に浮かぶ巨大な龍の看板、街角を照らす赤や青の光、雨にぬれた路面に映り込む色彩、それらは香港が「東洋の真珠」と呼ばれた時代の象徴でもある。
写真集「City of Lights」には、ネオンサイン文化を支えてきた職人たちの証言も収めた。ガラス管を手作業で焼き曲げる師傅、高所で看板を設置する技師、文化保護に取り組む活動家など、ネオン看板を守り続けてきた人々の物語を紹介する。文化遺産団体「香港貫珍」創設者のカーディン・チャンさんは「Keithの作品は香港の街とネオン看板の最も包括的な記録の一つ」と評価している。
ネオンサイン文化は衰退の一途をたどる一方で、新世代のアーティストによる再解釈も進んでいる。展覧会では劉浩輝(Jive Lau)さんら若手作家の取り組みも紹介し、ネオンサインを現代アートに取り込む試みも披露した。マクレガーさんは「ネオンサインは失われるのではなく、形を変えて生き続ける」と語り、文化の進化と再生を強調する。
会場では、書籍と連動した限定版アートプリントなども販売している。9月30日まで。同展は11月、東京・新宿でも開催予定。